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CEO Memo #001

ERPの「外側」にある競争優位を、誰が実装するのか

石田 寛成 2026年4月16日 約5分

Formulaがなぜ存在するのか。ERPでもSaaSでもなく、なぜFormulaなのか。

自分の中でようやく言語化するに至ったので、それを一枚の図で説明する。業務プロセスを「レイヤー」で分解する考え方だ。今日はその話をする。

業務には「層」がある

ある業務プロセスを横に分解してみる。たとえば「購買見積」なら、作成 → 送信 → 比較 → 合意という業務プロセスの流れがある。見積書を作り、サプライヤーに送り、回答を比較し、条件を合意する。

次に、そのプロセスを縦に分解する。同じ「作成」でも、中身の複雑さ・独自性は企業によって全然違う。

この「縦の層」が、すべてを決める。

作成 → 送信 → 比較 → 合意
L1 標準 ERP ERP ERP ERP
L2 調査・ブリーフィング
L3 独自比較ロジック
L4 固有の承認フロー 多面評価 部門横断調整
横軸 = 業務プロセスの流れ / 縦軸 = 独自性のレイヤー(例:購買見積)

レイヤー1はERPの仕事

レイヤー1は、どの企業でもやる標準業務だ。見積書を出す。請求書を受ける。在庫を記録する。これは「法規制対応のために生まれた」領域であり、正確に記録することが目的だ。

ERPは、まさにこのために存在する。System of Record。記録の正本を持つシステムだ。SAPが世界中の企業に導入されてきた理由は、この標準業務を正確に、確実に、安定して回せるからだ。

レイヤー1をERPがやること自体は、何も間違っていない。

問題は「レイヤー2〜4をERPでやろうとする」こと

自社独自の比較ロジック、調査プロセス、承認フローを、ERPのモジュール拡張でやるべきではない。

なぜか。ERPは低位標準化のソフトウェアだ。標準プロセスに業務を合わせる思想で設計されている。「誰がやっても同じ結果になるべき業務」に最適化されている。

しかし、レイヤー2〜4は違う。ここは「企業が独自のやり方をしているからこそ、それが競争優位を生んでいる」領域だ。独自プロセスであることそのものが、価値の源泉なのだ。

これをERPの標準モジュールに押し込めると、二つの問題が起きる。一つは、カスタマイズの保守コストが膨れ上がり、アップグレードのたびに地獄を見ること。もう一つは、もっと本質的な問題だ。自社の強みの領域まで低位標準化に合わせてしまうことで、競争優位性そのものを失う。標準化すべきでないものを標準化してしまうのだ。

A00 Section 3.4 SaaSやERPパッケージは、一定の標準業務には強い。しかし、中核業務は企業固有性が高く、部門横断で、例外が多く、意思決定そのものが競争優位であるため、これらだけでは十分に解けない。

SaaSでも解けない理由

ではSaaSはどうか。「レイヤー1がERPなら、レイヤー2〜4をSaaSでやればいいのでは?」と思うかもしれない。

しかし、この領域がSaaSで埋まるほど、エンタープライズの業務はシンプルじゃない。SaaSで埋まるほどだったら、もう取られている。取られているか、市場として小さいかのどちらかだ。

エンタープライズの独自業務領域は、企業ごとに違いすぎて、汎用的なSaaSでは吸収しきれない。これはA00が見ている世界と同じだ。

Formulaは「オーバーレイ」である

ここまでの話を踏まえると、Formulaのポジショニングが一つの図で説明できる。

FORMULA
独自業務ロジック
競争優位を生んでいる固有プロセスを
コード化・システム化する
完了データのみ通信
ERP / SAP
System of Record
標準業務の正確な記録・法規制対応
Formula = ERPのオーバーレイ

Formulaは、ERPを置き換えるのではない。ERPの上にオーバーレイとして乗る

ERPからは元データをもらう。独自業務のオペレーション(調査、比較、判断、調整)はFormulaで行う。完了したデータだけをERPに戻す。途中経過の「遷移」はERPに渡す必要がない。

これが、PortXが「競争優位そのものを実装する」と言っている意味だ。レイヤー1(標準業務・記録)はERPに任せ、レイヤー2〜4(独自業務・競争優位の源泉)をFormulaで実装する。

なぜ今なのか

「そんなの昔から分かってたことじゃないか。なぜ今までやらなかったのか」

答えはシンプルだ。今まではコストが高すぎた

レイヤー2〜4は企業ごとに違う。個別に設計し、個別にコードを書き、個別にテストし、個別に運用保守する必要がある。従来のSIではそのための知的作業コスト(要求整理、設計書作成、仕様の構造化、変更影響の追跡...)が膨大だった。だから結局、ERPのモジュール拡張という「無理な選択肢」を取るか、独自開発に何年もかけるしかなかった。

LLMがこの知的作業コストを大幅に下げた。そして、Formulaがそれを「実務として成立させる基盤」に変えた。

A00 Section 4 — Why Now LLMがシステムプロジェクトを成立させる知的作業を大幅に低コスト化し、Formulaがそれを実務として束ねたことで、初めてユーザー主導のエンタープライズSIが可能になった。

要するに、今まで「高すぎてERPに押し込めるしかなかった独自業務」を、現実的なコストでシステム化できるようになった。それがFormulaのWhy Nowだ。

独自プロセスは「バグ」じゃない。「強さ」だ

ERPベンダーやコンサルは、よく「業務を標準化しましょう」と言う。それ自体は、レイヤー1の話としては正しい。標準化できる部分は標準化すべきだ。

しかし、レイヤー2〜4に残っている独自プロセスを見て「これは非効率だから標準化しましょう」というのは、的外れなことがある。その独自プロセスこそが、その企業の強さの源泉だからだ。

大手製造業が長年かけて磨き上げてきた、自社独自の調達評価、生産調整、在庫判断、配車ロジック。それは「ERPに合わせるべき非効率」ではなく、「コード化して磨き上げるべき競争優位」だ。

Formulaは、その競争優位をコード化するために存在している。

ERPを本当に理解している人は、ERPの「外側」があることを知っている。全部を自分たちでやろうとするのは、低位標準化のソフトウェアを理解していない証拠だ。

その外側にこそ、顧客の競争優位がある。PortXは、その外側を実装する会社だ。

ERPがない領域でも「層」を分けて考える

ここまでERPとFormulaの棲み分けを話してきたが、もう一つ重要なことがある。

実際には、ERPが入っていない業務領域もたくさんある。全部がSAPで管理されている企業の方がむしろ少ない。

その場合でも、この「レイヤーで分けて考える」思想は同じだ。Formulaで業務をシステム化するとき、L1(標準的な記録・処理)とL2〜L4(独自の判断・ロジック)を分けて設計することが重要になる。

なぜか。L1は将来ERPやSaaSが入る可能性がある。あるいは他システムとのデータ連携が必要になる。そのとき、L1とL2〜L4が混在した設計だと、切り分けられなくなる。最初から層を分けて設計しておけば、L1の部分をERPに委譲することも、L2〜L4だけを磨き続けることも、柔軟にできる。

つまりFormulaでシステムを作るときも、「ここは標準的な記録処理」「ここは独自の競争優位ロジック」と意識的に分けて設計していく。この考え方こそが、Formulaで正しく業務をシステム化するための設計原則だ。

この記事のまとめ